「ハラスメントの防止について ~特にパワー・ハラスメントについて~」

             平成28年9月5日 於東大阪市クリエイションコア

                  大阪弁護士会 弁護士 吉 岡 稔 浩

 

 

 

1.ハラスメントharassment)とは?

 

職場・学校・家庭などで,上司や教師など力関係で優位にある者が,他者に対して精神的・身体的苦痛を与える行為

 

 

 

2.ハラスメントの類型

 

  セクシュアル・ハラスメント(セクハラ) 性的言動によって他者に不快感を感じさせること。1989新語・流行語大賞。

 

  パワー・ハラスメント(パワハラ) 同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。

 

  マタニティ・ハラスメント 働く女性が妊娠、出産にともなう就業制限や産前産後、育児休業等によって業務上支障をきたすことを理由として精神的、身体的な嫌がらせを受けたり、解雇や雇止め、自主退職の強要、配転などの不利益や不当なあつかいを受けること

 

  キャンパス・ハラスメント キャンパスでの人間関係において学生に対し行われるハラスメント

 

  アカデミック・ハラスメント 研究教育の場における権力を利用した嫌がらせ

 

  ジェンダー・ハラスメント 性に関する固定観念や差別意識に基づく嫌がらせ。女性又は男性という理由のみで性格や能力の評価や決め付けを行うこと。

 

  ドクター・ハラスメント 医師や看護師をはじめとする医療従事者の患者や患者家族に対する心ない発言や行動

 

  アルコール・ハラスメント 飲酒の強要、イッキ飲みの強要、意図的な酔いつぶし、酔ったうえでの迷惑な発言・行動

 

  スモーク・ハラスメント 喫煙者が非喫煙者に与える害やタバコにまつわる不法行為全般

 

  モラル・ハラスメント 言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせること

 

  ソーシャルネットワーク・ハラスメント(ソーハラ) ソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用してのハラスメント

 

  上記がすべての類型を網羅するわけではありません。

 

近年、ハラスメントの類型が増加中! ← なぜ? 

 

 

 

3.ハラスメントharassmentの特徴

 

①同一集団内で

 

②地位を利用・濫用し

 

③他人を「侮辱」し、人間の尊厳を傷つける態度によって

 

④精神的・身体的苦痛を与え

 

⑤うつ病等のメンタルヘルス不全や職場環境悪化を生じさせる

 

 

 

4.ハラスメントの責任

 

加害者個人が刑事責任や民事上の不法行為責任または懲戒責任等を負うだけでなく、使用者も債務不履行責任や使用者責任・国家賠償責任(職場環境配慮義務違反)を負うことになります。

 

 

 

5.「指導」がハラスメントにならないために

 

パワーハラスメントととらえられる指導

パワーハラスメントにならない指導

    身体的暴力

②大声で罵倒する、机を叩くなどの威嚇的な行為

③大勢の前で注意する(内容による)

④長時間立たせるなど身体的苦痛を与える

⑤不適切な言葉、表現

 .身体的に危険を感じさせるような発言

 .雇用を脅かすような発言

 .人格を傷つけるような発言

感情的にならない。深呼吸して間を置く。

    別室に移動して、一対一で。

    当面の業務,問題のみに限定する。

    何が悪かったのか、その理由を説明。

    人格や性格を否定しない。

    相手に対する信頼・期待を一言添えて伝える。

    必要な指導を短時間行う。

    部下にどのように伝わったか確認する。

 

 

 

 

別室に移動して、一対一で。

 

必要と思われる指導を短時間行う。長時間くどくどと叱り続けない。

 

何が悪かったのか、その理由を説明する。

 

当面問題となる点のみにしぼって注意を行う。

 

相手に対する信頼・期待を一言添えて伝える。

 

必要な指導が終わったら、すぐに移動して業務にもどる。

 

 

 

 どのように感じ、考えるかは個人によって異なります。

 

この点を充分認識し、日々他者への思いやりと配慮をもって行動することこそが、ハラスメントの防止において、最も重要です(大阪医大HP

 

http://www.osaka-med.ac.jp/deps/jinji/harassment/definition.htm 参照)。

 

 

 

6.パワハラが発生した場合の対応

 

(1)未然防止が最も望ましい

 

   職場の風通しをよくする

 

   職場のメンバーの個性を理解し,人の痛みに敏感になる

 

   声かけ

 

   指導とパワハラの違いの理解

 

(2)早期発見

 

  業務管理 だれがだれとどのような業務を担当しているか?(責任・分担)

 

進捗状況はどうか? 意見・方針の対立は? 成績は?

 

  労務管理 出欠状況、残業、休日出勤、欠勤・遅刻の理由の把握

 

  被害者・加害者となりそうな人の声を聴く

 

    「進捗状況はどう?」「期日に間に合いそう?」

 

    「〇〇さんの仕事ぶりはどう?」「〇〇さんは協力してくれている?」

 

    業務上又は人間関係のストレス、職場での不満等を探り出す

 

(3)発生後の対応

 

  正確な事実確認 被害者・加害者・第三者から

 

  被害者からの聞き取り  不満の吐き出し > 事実関係の確認 

 

     時間をかける 回数を分ける  心情への配慮が不可欠

 

     秘密を守る

 

  聞き取りは聞き取りに徹する  指導・注意その他処分は追ってする   

 

  事実と評価・心情等を区別      

 

  担当者も1人で抱えこまない 上司や他の担当部署等に情報提供・相談

 

 

 

 職場環境配慮(改善)義務を意識する!