AV新法と青鞜の議論

2022(令和4)年6月15日(水)

 

AV新法の立法経過

「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案(AV新法)」は、令和4年5月25日、第208回常会に衆院内閣委員会(上野賢一郎委員長)の発議による衆法(衆議院議員による議員立法)として法案提出され(委員会付託による審査は省略)、5月27日、異議の有無による採決方法により全会一致で可決、衆院通過。参議院では、6月13日、内閣委員会に付託、翌14日、可決、会期末の15日、本会議で起立多数により可決、参院通過

令和4年6月15日、法律(令和4年第78号)として成立、6月22日、交付された(成立法律の条文)。

 

大正期「公娼制度」をめぐる山川菊栄と伊藤野枝の議論

法律の内容についての議論は、各所で行われており、ひとまず措く。

しかし、ここで、大正時代、青鞜社で、山川菊栄と伊藤野枝が「公娼制度」について交わした議論が想起される。

山川は、公娼制度の廃止をつよく主張し、

「売淫制度は、不自然な男女関係に伴って起こったものなので、男子の先天性というよりは、不自然な社会制度に応じて出来たものなのです」と理念的な即時廃止の論陣を張った(「日本婦人の社会事業に就いて伊藤野枝氏に与ふ」『青鞜』第6巻1号、1916)。

伊藤は、これに反論し、

「賤業婦」呼ばわり自体が女性を侮蔑する傲慢な態度と指弾し、

「彼女等をその侮辱から救おうとするには、他に彼女等を喰べさせるような途を見つけてからでなくてはならない」と経済的現実的な視点をも示している(「山川菊栄様へ」『青鞜』前掲号)。

(『青鞜』の引用は、読みやすく改変を加えています)。

 

現代のAV新法をめぐる状況と大正期「公娼制度」をめぐる状況は、おなじではない。

しかし、大正期の議論を現代に持って来ても、そのまま通じる面が多分にあると思われる。